「親が借地に家を建てて住んでいたけれど、相続したら何をすればいいの?」「地主さんに連絡したら、名義変更料を払ってと言われた」。借地権付きの家を相続することになり、戸惑っている方は多いのではないでしょうか。
借地権は、土地は地主のもの、建物は自分のものという少し複雑な権利です。普通の土地や家の相続と違い、地主との関係や独特のルールがあるため、知らないまま進めると、払わなくていいお金を払ったり、相続人同士や地主とのトラブルに発展したりすることもあります。
本記事では、借地権の相続で地主の承諾が必要かどうかを整理したうえで、相続手続きの4ステップ、相続税の評価額の計算方法を解説します。あわせて、相続した借地権の4つの選択肢と、よくあるトラブルの対処法まで紹介します。
読み終えるころには、相続した借地権について、まず何をすればよいか、そして住む・貸す・売る・返すのどれを選ぶべきかを判断できるようになります。
結論からお伝えすると、借地権を相続したら「建物の相続登記を済ませて地主に通知し、使い道が決まらなければ早めに専門家へ相談する」のが、損をしにくい進め方です。
※本記事はプロモーションを含みます。本記事は一般的な情報をまとめたもので、個別の法律・税務の判断は弁護士、司法書士、税理士などの専門家にご確認ください。
1. 借地権は相続できる|地主の承諾も承諾料も不要
1-1. 法定相続人が相続するなら、地主の承諾はいらない
借地権は財産として相続でき、法定相続人が相続する場合は地主の承諾も承諾料も必要ありません。
税理士法人チェスターの解説によると、相続は亡くなった人の権利と義務をそのまま引き継ぐものなので、借地権も今の契約内容のまま相続人に移ります。地主に「承諾してもらう」必要はなく、名義変更料などの承諾料を払う義務もないとされています。
ただし、例外もあります。法定相続人以外の人に遺言で借地権を譲る「遺贈」の場合は、地主の承諾が必要です。この場合は、借地権価格の10%程度の承諾料がかかるのが一般的とされています。
| ケース | 地主の承諾 | 承諾料 |
|---|---|---|
| 法定相続人が相続する | 不要 | 不要 |
| 法定相続人以外に遺贈する | 必要 | 借地権価格の10%程度 |
| 相続後に第三者へ売却する | 必要 | 借地権価格の10%程度 |
| 相続後に建て替える | 原則必要 | 更地価格の3〜5%程度 |
1-2. 「土地を返して」「名義書換料を払って」と言われても、すぐに応じない
相続をきっかけに、地主から土地の返還や名義書換料の支払いを求められることがあります。
センチュリー21中央プロパティーの解説では、地主が土地の明け渡しを求めるには「正当事由」が必要で、相続そのものは理由にならないとされています。また、相続では承諾料の支払いは不要なので、高額な名義書換料を請求されても、そのまま払う必要はありません。
とはいえ、地主との関係はこの先も続きます。感情的に断るのではなく、「相続で引き継いだので、これまでどおりの契約でお願いします」と丁寧に伝えることが大切です。
1-3. まずは契約書で借地権の種類を確認する
借地権には、1992年7月31日以前の契約による「旧法借地権」、それ以降の「普通借地権」、更新のない「定期借地権」があります。種類によって、契約がいつまで続くか、最後に建物をどうするかが変わるため、相続したらまず地主との契約書を探して確認しましょう。
借地権の種類ごとの特徴や売りやすさは、「借地権の売却ガイド|相場・売り方4つ・費用と税金をFPがやさしく解説」でも詳しく紹介しています。
2. 借地権を相続したときの手続き4ステップ
借地権の相続手続きは、大きく次の4ステップで進みます。
| ステップ | やること | 期限・目安 |
|---|---|---|
| ① 遺言書の確認・遺産分割協議 | 誰が借地権を相続するかを決める | できるだけ早く |
| ② 建物の相続登記 | 借地上の建物の名義を相続人に変える | 相続を知った日から3年以内(義務) |
| ③ 地主への通知 | 相続したことを書面で伝え、地代を払い続ける | 相続人が決まったら早めに |
| ④ 相続税の確認・申告 | 借地権を含めた財産の評価をする | 相続を知った日の翌日から10か月以内 |
2-1. ステップ①|遺言書を確認し、誰が相続するかを決める
最初にやるのは、遺言書があるかを確認し、借地権を誰が相続するかを決めることです。遺言書がなければ、相続人全員で話し合う「遺産分割協議」を行い、内容を遺産分割協議書にまとめます。
このとき気をつけたいのが、兄弟などで借地権を共有名義にしないことです。センチュリー21中央プロパティーの解説でも、共有にすると売却や建て替え、地代の支払いなどのたびに全員の合意が必要になるため、おすすめできないとされています。
2-2. ステップ②|建物の相続登記をする(3年以内の義務)
借地権の相続で実際に必要な名義変更は、借地上の「建物」の相続登記です。借地権そのものは登記されていないことが多く、建物の登記が借地権を第三者に主張するための大切な根拠になります。
名義変更.jpの解説によると、2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならなくなりました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
主な必要書類と費用は次のとおりです。
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書
- 遺産分割協議書または遺言書
- 建物の固定資産評価証明書
- 登録免許税:建物の固定資産税評価額の0.4%
- 司法書士に依頼する場合の報酬:5万〜10万円程度が目安
2-3. ステップ③|地主に書面で通知し、地代を払い続ける
地主の承諾は不要でも、相続したことは書面で伝えておきましょう。法律上の期限はありませんが、連絡がないと地主が不安になり、関係がこじれる原因になります。
また、相続の直後は誰が相続するか決まらず、地代の支払いが止まってしまうことがあります。チェスターの解説では、相続人の誰かが代表して地代を払い、あとで精算する方法が勧められています。地代の滞納は、契約解除の理由になりかねないので注意が必要です。
2-4. ステップ④|相続税がかかるかを確認する
借地権は相続税の対象になる財産です。ほかの財産と合わせた合計が基礎控除額を超える場合は、相続を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税が必要です。借地権の評価方法は、次の章で解説します。
3. 借地権の相続税評価|計算方法と計算例
3-1. 評価額は「自用地としての価額×借地権割合」
借地権の相続税評価額は、その土地を更地とした場合の評価額に、借地権割合を掛けて計算します。国税庁のタックスアンサーでは、次の式が示されています。
借地権の評価額 = 自用地(更地)としての価額 × 借地権割合
借地権割合は地域ごとに決められていて、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。チェスターの解説によると、住宅地では60〜70%であることが一般的です。
3-2. 計算例
たとえば、路線価が1㎡あたり30万円の道路に面した100㎡の土地で、借地権割合が60%(路線価図の記号「D」)の場合を考えてみましょう。
- 自用地としての価額:30万円×100㎡=3,000万円
- 借地権の評価額:3,000万円×60%=1,800万円
※実際には、土地の形や道路との関係による補正などがあるため、正確な評価は税理士に確認しましょう。
なお、亡くなった人が住んでいた家の借地権を、同居していた家族などが相続する場合は、「小規模宅地等の特例」で評価額を大きく減らせる可能性があります。要件が細かいので、申告前に税理士へ相談するのがおすすめです。
3-3. 相続税の評価額と「実際に売れる価格」は違う
注意したいのは、相続税の評価額がそのまま売却価格になるわけではないという点です。借地権は買い手が限られるため、実際の売却価格は評価額より低くなることがよくあります。売却を考えるなら、借地権に詳しい不動産会社に査定を依頼して、実際の相場を確認しておきましょう。
4. 相続した借地権の4つの選択肢
相続した借地権の使い道は、「住む」「貸す」「売る」「返す」の4つが基本です。それぞれの特徴を表にまとめました。
| 選択肢 | 向いている人 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| ① 住み続ける | 自分や家族が住む予定がある | 地代や更新料の負担が続く。建て替えには地主の承諾が必要 |
| ② 建物を貸す | 住む予定はないが、家賃収入を得たい | 修繕や入居者対応の手間がかかる。契約内容を事前に確認 |
| ③ 売却する | 住む予定がなく、現金化したい | 第三者へ売るには地主の承諾と承諾料が必要 |
| ④ 地主に返す | 建物が古く、使い道も買い手もない | 建物の解体費用がかかることがある |
4-1. 住み続ける・貸す
自分や家族が住むなら、今の契約を引き継いでそのまま住み続けられます。ただし、建て替えや大規模なリフォームには原則として地主の承諾が必要です。雨漏りの修理など、建物を保つための最低限の修繕であれば、承諾は不要とされています。
住む予定がない場合は、建物を貸して家賃収入を得る方法もあります。ただし、建物が古いと修繕費がかさむこともあるため、収支をよく考えてから決めましょう。
4-2. 売却する
住む予定がないなら、売却して現金にするのも有力な選択肢です。売り先は、主に次の3つです。
- 地主に買い取ってもらう:承諾料がかからず、話がまとまりやすい
- 借地権専門の買取業者に売る:地主との交渉を任せられ、古い建物でも現状のまま買い取ってもらえることがある
- 地主と協力して底地とセットで売る:普通の土地として売れるため、高く売れやすい
いずれの場合も、先に建物の相続登記を済ませておくことが前提です。売却の流れや相場の目安は、借地権の売却ガイドで詳しく解説しています。
4-3. 地主に返す・相続放棄する
建物が古く、住む人も買い手もいない場合は、借地契約を終わらせて土地を地主に返す方法もあります。この場合、建物を解体して更地に戻すよう求められることが多く、解体費用の負担を考えておく必要があります。特に定期借地権は、期間が終われば更地にして返すのが原則です。
借地権以外の財産も含めて引き継ぎたくない場合は、「相続放棄」という選択肢もあります。裁判所の案内によると、相続放棄は相続があったことを知ったときから3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てる必要があります。ただし、相続放棄をすると借地権だけでなく、預貯金などすべての財産を受け取れなくなるため、慎重に判断しましょう。
5. 借地権の相続でよくあるトラブルと対処法
5-1. 地主との間で起きやすいトラブル
地主とのトラブルの多くは、「相続を機に条件を変えたい」という地主側の要求から始まります。センチュリー21中央プロパティーやチェスターの解説をもとに、よくある例と考え方を整理しました。
| トラブル | 考え方・対処法 |
|---|---|
| 土地の返還(立ち退き)を求められた | 明け渡しには正当事由が必要で、相続だけでは理由にならない |
| 名義書換料・承諾料を請求された | 法定相続人の相続なら支払いは不要。丁寧に説明して断る |
| 更新料を請求された | 契約に定めがなければ法的な支払い義務はない。ただし慣行で払っていた場合は、関係悪化に注意して話し合う |
| 建て替えや売却を認めてもらえない | 裁判所に地主の承諾に代わる許可を求める「借地非訟」という手続きがある |
5-2. 相続人同士で起きやすいトラブル
相続人同士では、「誰が借地権を相続するか」「住むか売るか」で意見が分かれやすくなります。話し合いが長引くと、その間も地代や建物の固定資産税はかかり続けます。
さらに、空き家のまま放置して管理が行き届かなくなると、自治体から管理不全の空き家に指定され、土地の税金が上がるなどして地主とのトラブルの原因にもなります。使い道を早めに決めて、空き家の期間を短くすることが大切です。
5-3. 困ったときの相談先
借地権の相続は、法律、登記、税金、不動産の知識が絡むため、内容に合わせて専門家を選びましょう。
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 地主との交渉、トラブル、借地非訟 | 弁護士 |
| 建物の相続登記 | 司法書士 |
| 相続税の評価・申告、売却時の税金 | 税理士 |
| 売却価格の査定、地主との交渉を含めた売却 | 借地権に強い不動産会社・買取業者 |
借地権専門の不動産会社の中には、弁護士や税理士と連携して、地主との交渉から売却までまとめて対応してくれるところもあります。何から手をつければいいかわからないときは、まず無料相談を利用してみるのも一つの方法です。
借地権に対応する買取業者の選び方と主な相談先は、「借地権の買取業者の選び方|おすすめ相談先5社の比較とトラブル回避のコツ」で比較しています。
6. まとめ|借地権の相続は「登記と通知」を済ませてから使い道を決めよう
借地権は、法定相続人であれば地主の承諾も承諾料もなく相続できます。最後に、相続したときにやることをチェックリストで振り返りましょう。
- ✅ 遺言書を確認し、誰が借地権を相続するかを決めた(共有名義は避ける)
- ✅ 地主との契約書を探し、借地権の種類と契約内容を確認した
- ✅ 建物の相続登記を、相続を知った日から3年以内に済ませる
- ✅ 地主に相続したことを書面で伝え、地代の支払いを続けている
- ✅ 借地権の評価額を計算し、相続税の申告が必要か確認した
- ✅ 住む・貸す・売る・返すのどれにするか、家族で話し合った
- ✅ 地主から高額な請求をされたら、払う前に専門家に相談する
まず取り組みたいのは、契約書と建物の登記を確認して、相続登記と地主への通知を済ませることです。そのうえで、住む予定がなければ、借地権に詳しい専門家に相談して、売却も含めて使い道を考えましょう。
よくある質問
Q. 借地権を相続したら、地主に連絡しないといけませんか?
A. 法律上の義務や期限はありませんが、連絡しておくのがおすすめです。相続人が決まり、建物の相続登記を済ませたタイミングで、書面で通知すると丁寧です。話し合いが長引く場合は、途中経過だけでも伝えておくと安心です。
Q. 借地権を兄弟で半分ずつ相続しても大丈夫ですか?
A. 法律上は可能ですが、おすすめできません。売却や建て替え、地代の支払いなどのたびに全員の合意が必要になり、将来のトラブルの原因になります。一人が相続して、ほかの相続人には代償金を払うなどの方法も検討しましょう。
Q. 地主から「契約書を作り直すので更新料を払って」と言われました。
A. 相続では、今の契約内容がそのまま引き継がれるため、新しい契約や更新料の支払いに応じる義務は原則ありません。地代はきちんと払うことを伝えたうえで、丁寧に断るのが基本です。判断に迷うときは、弁護士などの専門家に相談しましょう。
Q. 古い家で住む予定もありません。どうすればいいですか?
A. 借地権専門の買取業者の中には、古い建物や荷物が残ったままでも買い取りに応じるところがあります。自分で解体する前に、まず査定を依頼して、売却できるかどうかを確認するのがおすすめです。


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