「青色申告にすると節税になると聞くけど、手間が増えるのでは?」「白色申告のままでも困っていないから、切り替えるべきかわからない」。個人事業主として確定申告をしていて、こうした疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
青色申告は、きちんと帳簿をつける代わりに、税金面のさまざまな特典を受けられる制度です。ただし、届け出の期限を過ぎると翌年まで使えなかったり、申告の方法によって控除額が大きく変わったりするため、仕組みを知っておかないと損をしてしまいます。
本記事では、青色申告の主なメリットを整理したうえで、白色申告との違いと節税額の目安を解説します。あわせて、始め方と提出期限、デメリット、2027年分から始まる控除額の見直しまで紹介します。
読み終えるころには、自分が青色申告に切り替えるべきか、そして最大の控除を受けるために何を準備すればいいかを判断できるようになります。
結論からお伝えすると、事業で利益が出ている個人事業主は「青色申告承認申請書を期限内に出し、会計ソフトで複式簿記をつけてe-Taxで申告する」のが、もっとも得をしやすい方法です。
※本記事は2026年10月時点の国税庁などの公表情報をもとにしています。税制は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁のホームページや税務署、税理士にご確認ください。
1. 青色申告とは|白色申告との違い
1-1. 帳簿をつける代わりに、税金の特典を受けられる制度
青色申告とは、一定の帳簿をつけて、その記録にもとづいて正しく申告することを条件に、税金面の特典を受けられる制度です。国税庁によると、不動産所得、事業所得、山林所得がある人が対象で、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を出す必要があります。
届け出をしていない人は、自動的に「白色申告」になります。
1-2. 白色申告との違い
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前の届け出 | 必要(青色申告承認申請書) | 不要 |
| 帳簿のつけ方 | 複式簿記(簡易簿記も可) | 簡易な記帳 |
| 特別控除 | 最大65万円(2027年分から最大75万円) | なし |
| 家族への給与 | 適正な額を全額経費にできる(届け出が必要) | 配偶者86万円・その他の親族50万円までを控除 |
| 赤字の繰越し | 3年間繰り越せる | 原則できない(一部の損失を除く) |
| 30万円未満の備品などの一括経費化 | できる(年300万円まで) | できない |
※白色申告の専従者控除の金額は、所得税法で定められた上限額です。
2. 青色申告の主なメリット6つ
2-1. 最大65万円の青色申告特別控除
青色申告の最大のメリットは、所得から最大65万円を差し引ける「青色申告特別控除」です。国税庁によると、控除額は帳簿のつけ方と申告の方法で次のように変わります。
| 控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表などを添付したうえで、e-Taxで申告する(または優良な電子帳簿で保存する) |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表などを添付して、期限内に書面で申告する |
| 10万円 | 上記以外の青色申告(簡易簿記など) |
同じ複式簿記でも、紙で出すかe-Taxで出すかで控除額が10万円変わります。会計ソフトを使えば、複式簿記の帳簿づけもe-Taxでの申告も難しくありません。
2-2. 家族への給与を経費にできる
生計を同じにする15歳以上の家族が、もっぱら事業を手伝っている場合、届け出た範囲内で支払った給与を必要経費にできます(青色事業専従者給与)。白色申告では控除できる金額に上限があるため、家族と一緒に事業をしている人にとって大きなメリットです。
ただし、専従者として給与を受け取った家族は、配偶者控除や扶養控除の対象にはなれない点に注意しましょう。
2-3. 赤字を3年間繰り越せる
事業が赤字になった年の損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越し、黒字の年の所得から差し引けます。開業直後で赤字が出やすい時期でも、その分を後の年の節税に活かせます。前年も青色申告をしていれば、赤字を前年の所得と相殺して所得税の還付を受ける「繰戻し」もできます。
2-4. 30万円未満の備品をその年に全額経費にできる
本来、10万円以上のパソコンや機械などは、何年かに分けて経費にする(減価償却する)必要があります。青色申告の一定の要件を満たす人なら、取得価額30万円未満の資産を、買った年に全額経費にできる特例があります(年間合計300万円まで)。
国税庁によると、2026年4月1日以後に取得したものは、上限が「40万円未満」に引き上げられています。
2-5. 貸倒引当金を経費にできる
取引先に対する売掛金などが回収できなくなるリスクに備えて、年末の売掛金などの5.5%以下(金融業は3.3%)を「貸倒引当金」として経費にできます。
2-6. 帳簿をつけることで、お金の流れが見える
税金以外のメリットとして、毎月の売上や経費、利益がはっきりわかるようになることも大きいです。融資を申し込むときにも、青色申告決算書があると事業の状況を説明しやすくなります。
融資の審査で見られるポイントは、「日本政策金融公庫の融資は個人事業主も使える?」で解説しています。
3. 節税額はどのくらい?シミュレーション
青色申告特別控除65万円を受けた場合、所得税と住民税がどれくらい減るかの目安を計算してみました。
| 課税所得の目安 | 所得税+住民税の税率 | 65万円控除による節税額 |
|---|---|---|
| 300万円 | 20% | 約13万円 |
| 500万円 | 30% | 約19.5万円 |
※所得税は課税所得330万円以下で10%、330万円超695万円以下で20%、住民税は一律10%として計算した目安です。復興特別所得税や国民健康保険料への影響は含みません。
さらに、控除で所得が下がると、国民健康保険料が安くなることも期待できます。白色申告のままでいるより、毎年10万円以上の差がつくことも珍しくありません。
4. 2027年分から控除額が見直される
4-1. e-Taxなら75万円、書面提出は10万円に
令和8年度税制改正で、青色申告特別控除の金額が見直されました。山田&パートナーズやfreeeの解説によると、2027年(令和9年)分の所得税から、次のように変わります。
| 帳簿・申告の方法 | 2026年分まで | 2027年分から |
|---|---|---|
| 複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿など | 65万円 | 75万円 |
| 複式簿記+e-Tax | 65万円 | 65万円 |
| 複式簿記+書面で提出 | 55万円 | 10万円 |
| 簡易簿記(前々年の収入1,000万円以下) | 10万円 | 10万円 |
| 簡易簿記(前々年の収入1,000万円超) | 10万円 | 0円 |
紙で申告している人は、2027年分から控除が45万円も減ってしまいます。今のうちに、会計ソフトとe-Taxでの申告に切り替えておくのがおすすめです。
4-2. 75万円を受けるには、年の初めから準備を
75万円の控除には、e-Taxでの申告に加えて、優良な電子帳簿で保存するか、請求書などのデータを会計システムと自動連携して保存するといった要件があります。freeeの解説によると、優良な電子帳簿はその年の初めから要件を満たして運用する必要があるため、2027年分で受けたいなら2026年中に準備しておきましょう。
5. 青色申告のデメリット・注意点
- 帳簿づけの手間が増える:65万円控除には複式簿記が必要です。ただし、会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込んで自動で仕訳できるため、負担はかなり軽くなります。
- 帳簿の保存義務がある:帳簿などは原則7年間保存する必要があります。
- 届け出の期限を過ぎると使えない:期限を過ぎた場合は、その年は白色申告になり、青色申告は翌年からになります。
- 期限内に申告しないと控除が減る:55万円・65万円の控除は、確定申告の期限(原則3月15日)までに申告することが条件です。期限を過ぎると10万円控除になってしまいます。
6. 青色申告の始め方と提出期限
6-1. 青色申告承認申請書を出す
国税庁によると、提出期限は次のとおりです。
| ケース | 提出期限 |
|---|---|
| すでに事業をしている人 | 青色申告をしたい年の3月15日まで |
| その年の1月16日以後に開業した人 | 開業日から2か月以内 |
開業する人は、開業届と一緒に青色申告承認申請書を出しておくと、期限切れの心配がありません。税務署の窓口のほか、e-Taxでも提出できます。
6-2. 会計ソフトで帳簿をつけ、e-Taxで申告する
青色申告を始めたら、日々の取引を会計ソフトに記録し、確定申告の時期に青色申告決算書と確定申告書を作成して、e-Taxで提出します。マイナンバーカードがあれば、自宅から申告できます。
6-3. 節税できるほかの制度もあわせて使う
青色申告で所得を正しく把握できたら、小規模企業共済やiDeCoなど、掛金が所得控除になる制度もあわせて検討しましょう。
小規模企業共済の仕組みは「小規模企業共済とは?メリット・デメリットと節税額の目安」、制度の使い分けは「個人事業主の資産形成ガイド」で解説しています。
7. まとめ|青色申告は「期限内の届け出」と「e-Tax」がカギ
青色申告は、帳簿をつける手間はかかるものの、それを大きく上回る節税メリットがある制度です。最後に、始める前に確認したいポイントをチェックリストで振り返りましょう。
- ✅ 青色申告承認申請書の提出期限を確認した(開業2か月以内、または3月15日まで)
- ✅ 複式簿記で記帳できる会計ソフトを選んだ
- ✅ e-Taxで申告できるよう、マイナンバーカードなどを準備した
- ✅ 家族に手伝ってもらっている場合、青色事業専従者給与の届け出を検討した
- ✅ 2027年分からの控除額の見直し(書面提出は10万円)を理解した
- ✅ 小規模企業共済など、ほかの節税制度もあわせて検討した
まず取り組みたいのは、青色申告承認申請書を期限内に提出し、会計ソフトとe-Taxで申告できる準備を整えることです。
よくある質問
Q. 副業の個人事業主でも青色申告できますか?
A. 事業所得や不動産所得があれば、青色申告承認申請書を出して青色申告ができます。ただし、副業の収入が「雑所得」と判断される場合は対象外です。
Q. 青色申告をやめて白色申告に戻せますか?
A. 「青色申告の取りやめ届出書」を出せば、白色申告に戻せます。ただし、取りやめの届け出から1年以内に再び青色申告を申請すると、承認されない場合があります。
Q. 赤字の年でも青色申告するメリットはありますか?
A. あります。赤字を翌年以降3年間繰り越して、黒字の年の所得から差し引けるため、将来の税金を減らせます。
Q. 2026年分の申告は、65万円控除を受けられますか?
A. 見直しは2027年分からなので、2026年分は従来どおり、e-Taxで申告すれば最大65万円の控除を受けられます。


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